Top >  登山の本 >  孤高の人 (上巻) (新潮文庫)

孤高の人 (上巻) (新潮文庫)

孤高の人 (上巻) (新潮文庫)
新田 次郎
孤高の人 (上巻) (新潮文庫)
定価: ¥ 700
販売価格: ¥ 700
人気ランキング: 2414位
おすすめ度:
発売日: 1973-02
発売元: 新潮社
発送可能時期: 在庫あり。

冬読むのがよろしかろう
水筒に熱湯を入れ
甘納豆と煮干しを携行し私は仕事をしていた。

多少寒い時期に読んでいたのを思い出す。
冬山登山中の文章は布団の中で読んでいても寒く感じるほどだった。

冬山は魅力があり恐ろしい‥読みながら改めてそう思う、だがその一方で、やった事の無い冬山登山には妙に惹かれる。

浜坂は静かなとこだった、町では『文太郎さん』と親しく呼ばれていて嬉しく思った。
加藤文太郎記念図書館の二階には彼の息づかいが聞こえてきそうな展示物がある。
港に面した石碑も見たが石碑の文面は私もうなずき残念でならなかった。
文太郎さんの墓に手を合わせたが、まるで自分のおじいちゃんにでも会ってるような感じだった。

かつて孤独を愛した者の最期は布団の中で読んでいても息苦しく、とてもリアルで身の上にも起こりそうな気がして冷や汗が流れた。

到底真似出来ない人だが、近くに住む植村直己さんと文太郎さんは自然界の神様に神として認められ召されたのではないだろうか。

家にいながらにして極寒の北アルプスで凍えることのできるほどのリアリティ
山岳小説というのはどうやら狭いジャンルのようで、ちゃんとした作品を数多く世に出している日本の作家ということになると、10人どころか5人いるかどうかも怪しいです・・・。

逆に言うとそれだけ新田次郎が有名であるとも言えるのですが、短編長編あわせた様々な作品の中でこの『孤高の人』が最も面白いです。主人公は昭和初期に日本アルプスをたった一人で、しかも超人的なスピードで征服しまくった実在の人物である加藤文太郎です。非常に口下手で人との関わりが下手な人物なのですが、作者の巧みな筆運びによって、読み手は知らず知らずのうちに文太郎を応援してしまいます。

特に冬山での単独行はちょっとしたミスが命取りになる過酷な作業のはずなのですが、驚異的な体力と周到な準備を怠らない文太郎を見ていると、なんだか簡単そうに見えてしまいます。実際に当時としては相当抜きん出た存在だったのでしょう。

僕は一度もアルプスに行ったことはありませんが、この本を読むことで、自分が槍ヶ岳の山頂に一人で立ち、凍てつくような透明で鮮烈な空気を吸い、深い深い雪を踏みしめて稜線を延々とラッセルして行くような・・・そんな気分を味わうことができます。


2008年のNo.1
「氷壁」「神々の山嶺」から山岳小説にハマり、有名どころはほとんど読んだと思う。
山岳小説と言えばコレが一番に挙げられるのを知りながら、出版年月日の古さから長らく手が出なかった。
舞台は海外の名峰でもなく、岩壁でもなく…。
なんとなく「難しい山に登る話の方が、より感動するはず」という根拠のない思いこみもあったように思う。
戦前のこの時期に、当時の装備で単独で、剣などの日本アルプスに登ることは、現在海外の名峰に挑戦することに匹敵する…のかどうかは分からない素人である。
そこを理解できなくても、「人間 加藤文太郎」に胸うたれたのである。
今読んでも全く古くない!
むしろ、これほどの作品、今はなかなか出会えないのではないだろうか!
「孤高」という言葉の意味を、初めて理解出来た気がする。
今後、私の中では「孤高」=「加藤文太郎」だろう。
「孤高」という言葉を、軽々しく使って欲しくない。
そんな気にさせられる一冊だ。
「孤高」とは、こんなにも厳しく、気高く、凄烈なものなのだ。

登山の本